江戸川病院

社会福祉法人 仁生社

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診療科・部門|外科|頸部食道がん

頸部食道がん

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「ノド」の話

人間のノドには空気の通り道である気管と食べ物の通り道である食道の2つの管が存在しています。


人間は常に呼吸をしています。そのため、ノドを内視鏡で見てみると、通常は図のように

喉喉頭が広く展開し、声帯が大きく開いて、気管に空気が入りやすいようになっています。


一方、食べ物を飲み込むときは、図のように喉頭全体がシャッターのように図の上側にあがり、咽頭が広く展開され、食道に食べ物が流れ込むようになります。

このとき、声帯は閉鎖して気管の蓋になって、食べ物が気管に入り誤嚥するようなことがないようにしてくれます。

頸部食道がん

頸部食道がんとは読んで字のごとく、頸部食道にできたがんのことです。「頸部食道とは食道入口部から胸骨上縁の高さまでの食道」と定義されています。だいたい、のど仏の下にある「くぼみ」からまっすぐ下におりて骨に当たるところまでの約5cmが頸部食道の範囲に相当します。

頸部食道がんは全ての食道がんの約5%と比較的まれな病気です。胸部食道がんと比べると、頸部食道がんは頸部のリンパ節には転移を起こしやすいのですが、胸部のリンパ節には転移を起こしづらい傾向があります。

そのため頸部食道がんの手術では、頸部での手術操作だけで治療が完結することが多く、患者様への負担は少なくてすみます。一方で、頸部食道は咽頭や喉頭と連続しているため、がんの部位や大きさによっては喉頭も一緒に切除せざるをえないことがあります。喉頭を切除すると、声帯が切除されるため声を失うことになります。

また、首の付け根に永久気管孔という息の通り道(穴)ができます。もちろん努力により発声法を取得したり、代用音声による発声は可能ですが、お風呂に入っても肩までお湯につかれない、など、生活の質の低下はまぬがれません。そのため、患者様によっては、喉頭を温存するため手術というがん治療において非常に有力な治療手段を選択肢から外し、化学放射線療法による治療を選択することも多いのが現状です。

頸部食道がんの咽喉温存手術

一般的に頸部食道がんの場合、がんの病巣が頸部食道にとどまっていれば咽喉温存手術は可能といわれています。

しかし、実際には頸部食道がんで手術を受けられた患者様の約3分の2で喉頭摘出手術が行われています。これは、食道入口部付近は図のように喉頭や気管、椎体といった硬い構造物に囲まれた狭い領域であるため、がん病巣を確実に取り残しなく摘出し、新たな食べ物の通り道を作成する(消化管再建)手術手技の難易度が高いことが一つの原因です。

当院では「喉頭回転法」という手法を用いて、できる限り喉頭を温存する頸部食道がん手術を行っています。この方法を用いると、咽喉にまで拡がるがんであっても、声帯を残して確実にがん病巣を摘出し、安全に消化管吻合(ふんごう:縫い合わせること)を行うことができます。


図は喉頭回転法を用いて手術を行った患者様の手術後の内視鏡の写真です。

この患者様はがん病巣が一部下咽喉にまで広がっていましたが、喉頭を温存しながら頸部食道と下咽喉の一部を摘出し、下咽喉の高さで消化管吻合を行いました。手術後も問題なく発声が可能でした。

残念ながらすべての患者様に喉頭温存手術が行える訳ではありませんが、他の施設で喉頭温存が難しいといわれた患者様でも、当院では可能なこともありますので、ご相談ください。

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