社会福祉法人 仁生社
江戸川病院
2024-09-03更新
当部門は、開設以来、高精度放射線治療(IMRT:強度変調放射線治療)に特化した放射線治療を行ってきました。従来型の放射線治療である腫瘍も周辺の正常組織も一色淡に照射する治療機器およびシステムは全て廃棄し、オーダーメイドの照射であるIMRTに特化した治療を、すべての患者様に対して行ってまいりました。特に、治癒が難しい患者様にとって、放射線による有害事象や免疫力の低下は切実な課題であり、緩和的、姑息的な放射線治療であっても、高精度な放射線治療(IMRT)を行うべきであると考えています。
創設期はIMRTの専用機であるトモセラピーを3台導入し(当時としては3台の導入施設は世界初)、CTガイド下のらせん型IMRTを行ってきました。トモセラピーは、様々な形状の標的に対してオーダーメイドの照射野を作成し、CTガイド下で正確に位置を合わせて照射ができます。位置合わせを行うCTは、放射線被ばくを低減するため、低線量のX線を用いています。さらに放射線治療を行うX線発生源と低線量CTを撮影するためのX線発生源は同一であるため、ずれのない位置合わせができます。CTガイド下のらせん型IMRTは、前立腺がんや頭頚部がん、脳腫瘍、骨腫瘍など、動きの少ない臓器では威力を発揮しますが、膵臓がんや胆管がん、肝臓がんなど、呼吸性の移動が大きい部位や、子宮頸がんなどCTよりMRIの方が病状を正確に把握できる部位では、MRIガイド下の方が有用であると考えています。
さらに、放射線治療を行う度にCT画像やX線透視画像を撮影することは、放射線被ばくの観点から、慎重に判断すべきであると考えられます。がんに罹患するまでは、CTやX線透視による放射線被ばくは、年1,2回程度だったと思います。しかし、癌になってからは、何度もCTやレントゲン検査(胸部単純X線など)を行い、さらに放射線治療で毎度位置を合わせるためにCTを撮影する状況に、「がん治療で新たながんを造ってないのか?」という疑念を持たれる方も多いと思います。発がんのリスクというデメリット以上に、がんを治療するメリットの方が大きいので、放射線治療が容認されるとは言っても、被ばくを低減する取り組みは常に行うべきであると考えています。放射線治療は放射線を使わざるを得ませんが、位置を合わせるためには放射線は使わなくても済みます。放射線を使わなくとも目的を達成できるなら、放射線を使うべきではないと思います。MRIガイド下の放射線治療は、放射線被ばくの無いMRI画像を位置合わせに用います。さらに、外からは肉眼では見えない体内の臓器および腫瘍をリアルタイムに監視し、放射線が標的から外れた時や照射野に重要臓器が入り込んだ時には即座に照射を中断することができます。MRIガイド下IMRTは、放射線治療そのもの概念を大きく変える、いわば放射線治療のパラダイムシフトであると考えています。
①被ばくのないMRIを画像評価の基軸とする
MRIは放射線被ばくが無いだけでなく、CTと比較してコントラストに優れているという優越性があります。低コントラストな画像を用いた治療より、高コントラストな画像を用いた治療の方が、精度は高いと思います。
②「見てから照射」から「見ながら照射」へのパラダイムシフト
これまでの画像誘導下の放射線治療は、治療前にCTを撮影し、正確に腫瘍の位置を確認した上で照射します。これには落とし穴もあり、照射中に腫瘍が移動したり、照射している部分に正常組織が入ると、標的を外した照射になってしまう危険があります。MRIガイド下の放射線治療はリアルタイムに断層画像を撮影し、動画として臓器の動きが見えるため、状況に応じて放射線のビームを瞬時にon-offすることができます。すなわち、動く臓器でも動かない臓器と同等の位置精度で治療ができるわけです。
①すべての治療をIMRT(強度変調放射線治療)の技術で行っています
IMRTは、様々な方向から異なった強さの放射線をメリハリをつけて照射し、最適な放射線治療を個々の患者さんに合わせて提供することを目的としています。このIMRTというオーダーメイド治療の概念を、個々の放射線治療計画で実施しています。
②光放射線を用いた治療です
放射線には様々な種類がありますが、我々が扱う放射線はX線に代表される光子という光放射線です。この光放射線は、太陽からも、地面からも発せられており、私たちが最も身近に接している放射線です。しかも、人体への影響が最も詳しく調べられているため、放射線治療後の晩期の障害に対して未来予測が可能であります。半世紀以上にわたる臨床データが蓄積されている光放射線を用いるからこそ、半世紀後の患者さんの未来を予測できると考えています。目先のことだけを考えるのではなく、治療後の人生のことも考慮し、我々は光放射線を用いた癌治療を行っています。
③MRI画像に基づく画像誘導下の放射線治療です
これまでは単純X線写真(いわゆるレントゲン写真)やCT画像を用いて治療計画を立てる方法が主流でした。我々はCTでの不足分を埋めるため、MRI画像を原則としてすべての症例で撮影し、CTで見落としている所見を補完する形で治療を行っています。放射線治療は、原則として、同一部位に一生で一回しか受けられません。「一枚しかない切り札」を最大限活用していただくためには、できるだけ詳細な情報に基づく治療計画が必須であると考えています。
①夜間10時まで治療可能
放射線治療は、大線量の放射線を少ない回数に分けて一挙に行うと、副作用が大きくなるだけでなく治療効果が十分に発揮されない場合があります。ご様子を見ながら、少しずつ慎重に治療を進めていく方針をお勧めしています。平日は、ほぼ毎日治療のため通院する必要がありますが、お仕事や学校を休む必要はありません。今までと同じ生活を送ってください。仕事帰り、下校途中に夜10時まででしたら、治療が可能です。放射線による副作用を減らすため、全ての放射線治療はIMRT(強度変調放射線治療:腫瘍に線量を絞り込んだピンポイント照射)でおこなっており、安全性および利便性については海外の医学雑誌に学術論文として掲載されています。(参照:Hama Y. Feasibility of nighttime radiotherapy for physically independent patients. Clin Oncol Res 2019;2:1-3)
②放射線科での入院が可能
これまで、全国300病院以上の臨床各科の先生方から放射線治療のご依頼を頂いており、入院が必要な方に対しては、放射線科での入院治療も受け付けております。全身状態が思わしくない方、通院ができない方であっても放射線治療がお役に立てる場合があります。そのような患者様に、できる限りのお手伝いをさせて頂いております。担当医師に、遠慮なくお尋ねください。
Q:どんながんでも治療できますか?
A:正常組織への負担が少ないので、画像でとらえられるがんに対しては、原則どこでも治療が可能です。治療適応の判断は、全身状態や病状によって変わりますので、実際に診察を受けて頂き、担当医師に聞いてください。
Q:話だけでも聞きたいのですが可能ですか?
A:診療情報提供書など必要書類がそろっていない場合でも、受診することは可能です。その際、セカンドオピニオン(自費)としての受診になります。
Q:医療費はどれくらいですか?
A:治療は、原則として医療保険が適応されます。医療保険で治療を受けられた方は、高額医療費支給制度(一定額以上、支払う必要がない精度)が適応される場合があります。医療保険の適応外の疾患、病態に関しては、自由診療で治療を受けることができます。
Q:入院は必要ですか?
A:全ての治療をIMRT(強度変調放射線治療)およびIGRT(画像誘導放射線治療)の方法で行っており、副作用が従来の放射線治療と比べ低く抑えることができています。したがって、大きな合併症が無ければ、通常、外来通院で治療が可能です。仕事やゴルフなどの趣味も、続けられる場合がほとんどです。
Q:仕事があるので夜に治療を受けたいのですが・・・
A:夕方5時以降も放射線治療は行っています。よる10時頃まで放射線治療は行っていますので、仕事帰りに治療を受けることは可能です。
当院が行っている血管内治療は、カテーテルと呼ばれる細い管を、「がん」を栄養する動脈に進め、なるべく「がん」だけに薬を注入し、薬が流れ去らないように動脈に蓋をしておくという治療です。
この技術により注入する薬を大幅に減らし、臓器の障害を最低限度に抑えながら、『がん』を小さくするのを目的にしています。
『がん』のうち固形がんと言われる塊を作り、症状の原因となったり、臓器不全を来たしたりするタイプが対象になります。肝臓癌、転移性肝癌、肺癌、転移性肺癌、子宮がん、胃がん、乳がんなどが適応になりえます。脳腫瘍は神経障害をおこすため適応にはなりません。
詳細はお問い合わせ下さい。
・かかりつけの先生より、以下の資料をご準備ください。
①情報提供書
②治療データ(画像(CT/MRI/PET等、血液検査結果、病理検査報告書、過去に行った放射線治療の照射録等)
・過剰な事前検査を避けるためにも可能な限りご準備いただき初診予約をお願いします。
・海外の患者さま(外国籍の方)の受診希望はご相談ください
フリーダイヤル
0120-518-489(放射線治療室)