江戸川病院

社会福祉法人 仁生社

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診療科・部門|神経内科|アルツハイマー病

アルツハイマー病

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アルツハイマー病の治療は長らく対症療法薬しかありませんでした。対症療法とは症状を緩和するだけの治療であり、病気の進行を抑えることはできません。発熱に熱冷ましを用いるような治療です。アルツハイマー病は慢性進行性の疾患であり、物忘れから始まり、失語、失行、失認、遂行機能障害を呈するようになり、最後には何も出来ない、何ら意思表示の出来ない状態となります。

これまで、この経過を止めることは出来ませんでしたが、このアルツハイマー病の進行を初めて抑える可能性がある治療法が、2023年夏に米国で、2023年末に日本で認可となりました。アルツハイマー病の進行は、ベータ・アミロイドタンパク(Aß)の蓄積、それによる老人斑の形成、リン酸化タウの蓄積、それによる神経原線維変化の形成、最後に神経シナプスの減少、神経細胞死という順番で進行することが分かっています。

今回の治療法は、その最初の段階である蓄積しているAβを排除する薬剤の投与です。こうした病気の進行を抑える薬剤は疾患修飾薬と言われ、その薬剤が「レケンビ®」(一般名:レカネマブ)です。

当院でもその加療が可能となっています。対象となる方は ”アルツハイマー病による” 軽度認知障害(MCI)の方と軽度認知症の方です。無症状の方、中等度以上のアルツハイマー病の方は投与対象外となります。 ※アルツハイマー病以外の認知症は対象外です。

(実際に投与できるかどうかは、診察・検査を受けていただいた上での判断となります。「レケンビ®」についてのご相談は、メディカルプラザ江戸川 神経内科 新海医師 水PM(完全予約制)にて承ります。

地域連携室 フリーダイヤル0120-518120(月~金 8:30~17:00・土8:30~12:30)へお電話いただき、予約をお取りください。

レカネマブについて少し詳しくお話します。このレカネマブはAßの集合体であるプロトフィブリルに対する抗体で、その抗体を投与することで、人体に備わっている免疫の力でAßの集合体=プロトフィブリルを排除します。

Aßは約40個のアミノ酸により形成されているペプチド(タンパク質の小さなもの)であり、40個のアミノ酸でできたAß40, 42個のアミノ酸でできたAß42を区別できる測定系が1990年前半に開発され、その後の1990年代には、人間の脳でどのように蓄積しているか、盛んに基礎的な研究が行われました。


当時、当院の新海が東京大学大学院神経病理学に院生として在籍し、井原康夫教授(当時)のご指導のもとに、Aßがどのように人体の脳に蓄積していったかデータを出しました。そのデータの一つが下の図です。細かい説明が専門的になりすぎるため省きますが、左側の枠はアルツハイマー病と診断されることなく亡くなられた方々(事故死などの外因死を含む)で、右側の枠はアルツハイマー病(AD)の患者さんです。

アルツハイマー病と診断されなかった方々の横軸は年齢(歳代)、縦軸は脳から測定されたAßの量です。このAßの量は対数表示になっていることにご注目ください。この図から、アルツハイマー病と診断される前から、50歳代から70歳代にかけてAßが急速に蓄積されることがわかると思います。

(この図は当院の新海の学位論文「アミロイドß蛋白の髄膜および脳実質における蓄積」の一部です。学位論文には著作権があります。学位論文には著作権が放棄されたものがありますが、この学位論文の著作権は放棄されていません。引用するには著作権者の許諾が必要です)


(文責: 江戸川病院 神経内科 医長 新海泰久)