江戸川病院

社会福祉法人 仁生社

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卵巣がん

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卵巣がんについて

卵巣は子宮の両側に1つずつあり、大きさは親指大の楕円形の臓器です。卵管は子宮と連続して左右に1対あり、卵管の先に卵巣が存在します。 卵巣には表面や卵巣のなかに様々な細胞があり、それらの細胞から腫瘍が発生することがあります。卵巣に発生する腫瘍には卵巣がんである「悪性腫瘍」のほかに、「良性腫瘍」や悪性と良性の中間的な性質をもつ「境界悪性腫瘍」があります。

卵巣がんの症状

卵巣がんは、初期には自覚症状がほとんどありません。進行するとお腹が張る、お腹だけ太ったように感じる、下腹部にしこりが触れるなどの症状が出てくることもあります。見つかった時には進行していることが多いので、このような症状に気づいたときには、早めに婦人科を受診しましょう。

卵巣がんの診断

  • 画像検査
    がんの広がり(進行度)を診断します。
  • 超音波検査
    卵巣腫瘍の大きさや性状、周囲の臓器への広がり、腹水の量などを調べます。
  • 骨盤MRI検査
    超音波よりも広い範囲で骨盤の内部を検査します。卵巣腫瘍の大きさや性状、周囲の臓器への広がり、リンパ節が腫れているかどうかなどを調べます。
  • C T(P E T –CT)検査
    M R Iよりも広い範囲で、卵巣から離れた場所への転移を調べます。
  • 組織検査
    手術で組織を採取し、病理検査で良性・境界悪性・悪性の診断や組織型を調べます。卵巣には表面を覆っている表層上皮細胞、卵子のもとになる胚細胞、性ホルモンをつくる性策細胞などから成っています。
    これらすべての細胞から腫瘍が発生するため、卵巣腫瘍にはたくさんの種類があります。組織型によって治療方針が異なりますので、組織型を診断することが重要になります。

    組織型の種類

    • 表層上皮性腫瘍
      卵巣がんの約90%を占めています。表層上皮性卵巣がんも主に4つの組織型(漿液性がん、粘液性がん、類内膜がん、明細胞がん)に分けられます。
    • 胚細胞性腫瘍
      卵巣がんの5%程度を占める、比較的稀ながんです。10-20代の若い女性に発生することが多いため、将来妊娠ができる機能を温存する治療が必要となります。
    • 性策間質性腫瘍
      稀な卵巣がんで、若年者から高齢者まで幅広い年齢層で発症します。ホルモンを産生することもあり、多彩な症状を引き起こします。

卵巣がんの進行期(ステージ)

病気の広がりは大きくⅠ期からⅣ期までの4つの段階に分類されます。基本的には、手術後にお腹の中の状況や病理検査の結果で診断します。

手術進行期分類 (日本産科婦人科学会2014, FIGO2014)

Ⅰ期:がんが卵巣だけにとどまっている

ⅠA期 片側の卵巣に限局し、被膜表面への浸潤がない。
腹水にがん細胞がない
ⅠB期 両側の卵巣に限局し、被膜表面への浸潤がない。
腹水にがん細胞がない
ⅠC期 片側もしくは両側に限局している
ⅠC1期 手術操作により被膜が破綻した
ⅠC2期 被膜が破綻している、被膜表面へ浸潤している
ⅠC3期 腹水にがん細胞がある

Ⅱ期:がんが骨盤内に広がっている

ⅡA期 子宮や卵管に広がっている
ⅡB期 骨盤内の他の臓器に広がっている

Ⅲ期:がんが骨盤をこえて転移している、リンパ節転移がある

ⅢA1期 リンパ節転移がある
ⅢA2期 骨盤の外に顕微鏡的播種がある
ⅢB期 最大2cm以下の播種がある
ⅢC期 最大2cmを超える播種がある

Ⅳ期:がんが遠隔転移している

ⅣA期 胸水にがん細胞がある
ⅣB期 肺や肝臓など他の臓器に転移している

卵巣がんの治療

治療法は、卵巣がんの広がりや組織型に応じた標準治療に基づいて、体の状態、生活環境や合併症など総合的に判断し、ご本人やご家族と話し合って決めていきます。卵巣がんの治療は大きく「手術」と「抗がん剤治療」に分けられます。

手術

手術により腫瘍を出来る限り取りきることを目指しますが、腫瘍の広がりが非常に大きく、一回の手術で腫瘍の摘出がきちんと出来ない場合には、腫瘍の一部だけを摘出し病理検査による診断を確定し、抗がん剤治療の効果を期待する治療も選択肢となります。抗がん剤治療を何回か行った後、二次的腫瘍摘出術を試みます。妊娠を希望する方に対しては、卵巣がんの広がりや組織型に応じて妊孕性温存手術(妊娠出来る可能性を残す手術)が可能かどうか検討します。

抗がん剤治療

卵巣がんは抗がん剤治療が効く固形がんの1つと考えられています。ごく早期の方を除き、手術後は抗がん剤治療が必要となります。また、手術で腫瘍が十分に摘出できない場合、体の状態や合併症で手術が難しい場合には、手術前に抗がん剤治療を行うことがあります。

卵巣がんの抗がん剤治療は一般的に、T C療法(パクリタキセルとカルボプラチンの組み合わせ)を周期的に行います。進行した卵巣がんの場合には分子標的薬(ベバシズマブやオラパリブなど)を用いる場合もあります。