社会福祉法人 仁生社
江戸川病院
運動によって気管支の攣縮(れんしゅく)が生じるとされています。ぜんそくの患者さんに運動がきっかけとなって発作が生じることもあります。しかし、運動がぜんそくの危険因子ということではありません。実際に運動が小児のぜんそく患者にとって有益であることは報告されています。原因としては換気量(肺を行き来する空気の量)の増大、冷たく乾燥した空気または花粉症などのアレルギー体質の人はアレルギー物質の多いときにぜんそく様の症状が生じやすいと言われています。
ぜんそくの発作時と同様に運動によって気道粘膜がむくむ、痰が増える、筋肉が収縮することで気道が狭窄し、運動時の呼吸苦が生じます。
運動時の咳、呼吸苦、喘鳴(ヒューヒューする)、胸の圧迫感などです。
運動をしていない日常生活では症状が出ないことがほとんどです。
通常のぜんそくを発症していることもありますので、呼吸機能検査や気道可逆性検査(気管支を広げる薬を使用して検査)などを行います。また、日常生活では症状が出現していない場合にはこれら検査も陰性となるため、診断的治療(治療をしてみて治療効果が得られるかを確認すること)として運動前に治療薬である気管支を広げる薬を吸入してもらい運動時の症状の軽快を確認することも行っています。
薬物を使わない予防や治療としては気管支攣縮を生じさせないために換気量の増大を抑えることや、空気を温かく湿ったものにするためにマスク着用などが良いとされています。薬物治療としては短時間作用型の気管支を広げる吸入薬(SABA)が第一選択で、運動の10-15分前に吸入させています。もし、SABA使用でもコントロール不良の場合や毎日治療を行うような場合は吸入ステロイドを使用しています。運動が長時間に及ぶような場合(3時間以上)はロイコトリエン受容体拮抗薬を使用することも検討します。
治療に難渋する場合は、逆流性食道炎(胃食道逆流症)や副鼻腔炎が背景に隠れていたりすることもあり、そちらの疾患に対する治療を併用することもあります。
他にも、果物や野菜の摂取量が多いと喘息の発症リスクが減少するという報告もあり食事の介入なども行っています。
Boulet LP, O'Byrne PM. Asthma and exercise-induced bronchoconstriction in athletes. N Engl J Med. 2015 Feb 12;372(7):641-8. doi: 10.1056/NEJMra1407552. PMID: 25671256.
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