社会福祉法人 仁生社
江戸川病院
2023.07.06更新
BNCTは、「Boron:ホウ素」「Neutron:中性子」「Capture:捕捉する」「Therapy:療法」の頭文字から成っています。
日本語では「ホウ素中性子捕捉療法」といいます。
BNCTでは、がん細胞に取り込まれやすいホウ素化合物を使用します。
そのため、癌細胞を選択して破壊する治療法といえます。
BNCTは癌を細胞単位で選択し破壊します。そのため正常細胞には影響は少なくなります。
「放射線治療(陽子線・重粒子線含む)」では、正常細胞とがん細胞が同じような影響を受けます。
そのため、正確に照射領域を決定し、正常な細胞にダメージを与えないことが重要になります。
※「放射線治療(一般放射線治療・陽子線・重粒子線含む)」では、がん細胞と正常細胞の区別ができません。
よってBNCTは身体への負担の少ない癌治療といえます。
ホウ素化合物と中性子が衝突し、核分裂によって生じる
粒子線の一種「α線」によって
がん細胞だけを内側から死滅させます。
正常細胞はそのまま戻ります。
*癌細胞と正常細胞の混在も対応できます。
BNCT・ホウ素中性子捕捉療法では、以下の様な仕組みでがん治療を行います。
①がん細胞に取り込まれやすいホウ素をあらかじめ投与します。
②このホウ素に加速器から得られる「中性子」を照射します。
③ホウ素と中性子が衝突し核分裂によって放射線を出し、がん細胞を内部からたたきます。
がん細胞にだけ取り込まれる特定の「ホウ素化合物」をあらかじめ投与し、がん細胞内に蓄積。
このホウ素物に、加速器から得られる「中性子」を照射。
ホウ素化合物と中性子が衝突し、核分裂によって生じる粒子線の一種「α線」によってがん細胞を内部から死滅。
・ホウ素化合物
「ホウ素化合物」はBNCT専用に合成されており、癌細胞に選択的に取り込まれます。
生成するときに得られたエネルギー(2.33MeV)を全部細胞に伝達して使い切ってしまいますので、がん細胞に大きなダメージを与え死滅させることができます。正常な細胞では、エネルギーの低い中性子(~0.025eV)は殆ど影響も与えず通過していきます。
これまでの手法では、中性子を発生させるために原子炉が必要とされていました。
BNCTは新たながんの治療法として大変期待が持てるがんの治療法です。
エネルギーの低く、人体に影響のない中性子を得るには、発生源を原子炉に求める他なかったので、日本でも限られた原子炉施設でのみ研究として行なわれてきました。
安全性についても原子炉施設では常に核燃料を有しており、その管理も非常に大変なものとなります。
この治療環境ではがん患者さんへの負担も大きく、且つ一般の医療機関で行えるがん治療法として普及させる事は不可能で、大きな課題となっておりました。
「原子炉」というBNCTを普及させるための制約から解放されるために、加速器という、今までと違った方法で、治療に必要な中性子が出せるようになりました。
一般の医療機関にも導入が可能となり、多くのがん患者さんにこのBNCTを提供できるようになります。
病院に設置することができる、小型加速器が開発されました。
核燃料を使用せず、電源を切れば放射線が射出されません。
医療としての普及の可能性が広がり、BNCTによるがん治療に注目が集まっています。
放射線治療は、陽子線治療や重粒子線治療、定位放射線・マクロ的ピンポイント照射など大きく進展しました。
これらの治療法では領域選択性は抜群の精度を有します。
しかし、がんを細胞レベルで区別することはできず、本質的にはなんら手術切除と変わりません。
X線、重粒子線、陽子線は、照射の必要が無い正常な細胞へも影響を与えます。
BNCTは、正常な神経細胞を保護し、がん細胞を選択して、ミクロン単位で一つ一つ死滅させる治療法です。
また、従来の放射線治療では、正常な細胞へ影響が少ないように、数十回程度に分けて照射します。そのため、治療には1か月以上かかります。
しかし、BNCTでは、正常な細胞への影響が少ないことから、原則的に1回の照射で治療が完了します。
従来の放射線治療と比較して、BNCTの副作用は少ないです。