社会福祉法人 仁生社
江戸川病院
骨やリンパ腺などへの転移が無く、周辺臓器にも浸潤していない限局性の前立腺癌は、根治療法が可能です。 採血で腫瘍マーカーPSAを検査することで早期発見できます。その他の検査としては直腸指診、超音波検査、MRI検査を行います。 精査の結果、前立腺癌が疑われる場合は前立腺生検を行います。
当院では従来の超音波下前立腺生検に加え、より精度の高い生検であるMRI画像と超音波画像を融合して行うMRIfusion生検を主に行っています。 限局性前立腺癌の治療としては、症例によってマイクロ波凝固治療、ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術、放射線治療、ホルモン治療、監視療法を行います。
腫瘍マーカーPSA検査
直腸指診・超音波検査・MRI検査
MRI超音波フュージョン前立腺生検
前立腺癌の確定診断も、病変部の一部を採取し、顕微鏡の検査で癌細胞を確認します。従来の前立腺針生検は、MRI画像を頭にイメージしながら超音波画像(エコー)を見ながら6~16カ所穿刺する方法でした。確率は悪いですが、それでもエコーで病変が確認できれば、癌の診断はすることはできます。
ただ前立腺癌の描出は、エコーよりもMRIの方が圧倒的に優れているため、「MRIでは病変が見えていてもエコーではわからない」ことが多々あります。むしろ最近ではMRI撮像の精度が上がっており、より小さく微小な変化をとらえることができるため、エコーで見えないことが多い状況です。
その場合、勘に頼らざるを得ないため診断精度が得られません。ある程度の大きさのある前立腺癌であれば診断可能ですが、0.5~2cmの病変を正確に採取することはかなり難しくなります。
特に前立腺肥大症を伴う大きな前立腺の場合(前立腺肥大症があると前立腺癌になりやすいわけでは決してありません)、従来法では病変部を正確に採取することがより難しくなります。当科で行っているMRIとエコーを癒合した画像を用いた生検(フュージョン生検)では、かなりの精度で病変を採取することができます。
まずMRI画像を生検装置に取り込み、実際にみえるエコー画像と癒合させ、MRIで確認した病変(ターゲット)をエコー画面上に映し出します。そしてバーチャル生検を行います。これは実際に針を穿刺する前に「この角度でこの深さに針を刺したらここに到達する」ことがシュミレーションできます。シュミレーションを行うことで確実にターゲットに到達できるよう角度・深さを調整してから針を刺入します。
前立腺針生検には、経直腸的生検(直腸から針を入れる)と経会陰的生検(陰嚢と肛門の間の皮膚から針を入れる)があります。どちらも良い点、悪い点があり、当院ではどちらも施行可能ですので前立腺内のあらゆる部位の病変に対して適切な方法でアプローチできます。
当院使用のKOELIS TRINITY
今まで述べてきましたように、この方法ではMRI画像の精度が非常に重要です。当院では撮影方法に工夫を加え、以前に比べ格段に鮮明で詳細な画像が得られるようになりました。さらに我々の読影力(病変を見つける能力)も徐々に向上しており、治療が必要な重要な癌を見逃さないよう留意しています。
「前立腺癌は進行が遅いので、そこまでして小さな癌を見つける必要はないのでは?」と思われる方もいるかもしれません。確かに前立腺癌の中には、進行の遅くただちには治療が不要な癌も存在します。したがって、癌が見つかってもすぐに治療を行わないこともあります。この判断はやはり泌尿器科専門医が行うべきで、その中に一部急速に進行するタイプがあり、気を見るに敏で治療に踏み切ることが必要です。いずれにしても、まず正確に診断することができないと何も始まらないわけです。疑いはあるもののはっきりしないため、何回も針生検を受ける方もいらっしゃいます。
前立腺腫瘍マーカーPSA値の上昇やMRIで前立腺癌の異常を指摘されたり、また単純に前立腺癌が心配な方は、正確な診断が第一に重要と考えます。ぜひ当院を受診いただき、より精度の高い検査を受けることをお勧めいたします。
初期の前立腺癌を過剰に治療することを防ぐために行われます。監視療法を安全に行うために、適応となる基準が決められています。監視療法の開始後も定期的に検査を行い、仮に癌の進行があれば、手術や放射線治療の開始を検討します。
フォーカルセラピー