平成29年度 社会福祉法人仁生社 江戸川病院 病院指標

  1. 年齢階級別退院患者数
  2. 診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)
  3. 初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数
  4. 成人市中肺炎の重症度別患者数等
  5. 脳梗塞の患者数等
  6. 診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)
  7. その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)
年齢階級別退院患者数ファイルをダウンロード
年齢区分 0~ 10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~ 80~ 90~
患者数 20 114 126 221 698 862 1624 2498 1772 288
平成29年度に当院を退院された患者様を10歳ごとに集計したものです。
全退院患者数は8,223人で、60歳代以上の患者様が全体の75%以上を占めています。昨年と比べても年齢階級別の患者構成比にあまり変化はありません。
当院は東京東部地域の中核病院として、高度な医療を地域の皆様に提供してきました。最近では、がん患者様が仕事の終わった後でも放射線治療ができるよう、あるいはお子様が学校の終わった後にスポーツドクターに受診できるよう、夕方・夜間診療へも積極的に取り組んでいます。今後もさらに幅広い年齢層の患者様に受診していただけるよう、医療体制の充実を図ってまいります。
診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)ファイルをダウンロード
消化器内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
060340xx03x00x 胆管(肝内外)結石、胆管炎 限局性腹腔膿瘍手術等 手術・処置等2なし 副傷病なし 18 10.9 10.61 5.6 75.8
060300xx99x00x 肝硬変(胆汁性肝硬変を含む。) 手術なし 手術・処置等2なし 副傷病なし 11 14.0 13.0 0.0 77.6
060100xx01xx0x 小腸大腸の良性疾患(良性腫瘍を含む。) 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術 副傷病なし 9 6.7 2.7 0.0 62.7
消化器内科で多い症例は、胆管炎を含む胆道疾患が挙げられます。総胆管結石や閉塞性黄疸等に対して内視鏡を用いた治療や抗生剤投与を行います。その次に多いのは肝硬変です。主に点滴での加療が中心となります。3番目に多いのはポリープ切除術を伴う大腸の良性疾患です。通常は1泊2日で入院治療が完結し、消化器内科においては一番多い症例ですが、ここで集計されるのはDPC対象患者に限定されており、4泊5日までの当該疾患に対する治療は「短期滞在手術基本料」という別の枠組みでの算定となっているため、この集計結果には反映されておりません。ここでは何らかの合併症を来たした症例か、あるいは手術の前に「ヘパリン化」という特別な管理が必要な症例で、実日数が5日を超えた症例が集計されています。数年前より消化器内科医師が減少したことから、相対的な患者数も減少傾向にあるのが見て取れます。
循環器内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
050050xx02000x 狭心症、慢性虚血性心疾患 経皮的冠動脈形成術等 手術・処置等1なし、1,2あり 手術・処置等2なし 副傷病なし 371 2.55 4.62 0.54 69.05
050070xx01x0xx 頻脈性不整脈 経皮的カテーテル心筋焼灼術 手術・処置等2なし 139 4.15 5.30 0.72 63.50
050130xx99000x 心不全 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし 副傷病なし 110 16.05 17.71 3.64 79.52
"当院は東京都CCUネットワークに加盟しており、24時間、循環器専門医師による救急患者の受け入れが可能です。
最も多い症例は、虚血性心疾患(狭心症など)という心臓を取り巻く血管(冠動脈)が狭窄し、心筋に十分な血液が送れなくなる疾患です。進行することで心臓の働きが弱ることや、血管が完全に閉塞することで心筋が壊死し、突然死に至ることもあります。当科では虚血性心疾患に対しての血管内カテーテル検査は原則的に外来で日帰り検査として行っているため、入院の対象となるのは治療(ステント留置術やバルーン拡張術)目的の患者様です。これらの治療件数は都内でも上位であり、また入院日数もほぼ1泊2日で退院することができるため、平均在院日数も全国平均より短くなっています。また近年では不整脈治療にも力を入れており、特に心房細動に対するカテーテルアブレーション(経カテーテル心筋焼灼術)の件数が増えてきました。当院では熱による心筋焼灼術に加え、適応があれば冷凍バルーンによる焼灼術も行っています。この術式は従来のものと比べ、手術時間も短く、再発の可能性も軽減できるといわれています。
心不全は再入院率が高い疾患であるため、慢性心不全領域の認定看護師を中心に、担当看護師が退院後も電話訪問をし、生活習慣の改善指導や病識の向上を促しています。
整形外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
070230xx01xxxx 膝関節症(変形性を含む。) 人工関節再置換術等 188 16.54 25.09 0.00 73.91
160800xx01xxxx 股関節大腿近位骨折 人工骨頭挿入術 肩、股等 120 35.03 27.09 15.00 80.74
160620xx01xxxx 肘、膝の外傷(スポーツ障害等を含む。) 腱縫合術等 111 4.90 11.41 0.00 34.12
股関節や膝関節の変形性関節症の患者様が多いことが特徴です。一方でスポーツによる肘や膝の腱損傷の患者様も多く、幅広い年齢層の患者を受け入れています。原則として手術は待機的手術となりますので、患者様の状態にもよりますが、外来では「自己血貯血(自分の血液を手術までの間貯めておく)」を積極的に行っております。通常は、他人の血液を輸血する「同種血輸血」を行いますが、「自己血輸血」によって術後の合併症も回避できますので、早期退院にもつながっています。また、術後にリハビリが必要な患者様については、回復期リハビリテーション病棟もあることから、リハビリ目的にわざわざ転院させられることもありません。
28年度のデータと比較しても各症例数に大きな変化はありませんでした。
脳神経外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
010050xx02x00x 非外傷性硬膜下血腫 慢性硬膜下血腫穿孔洗浄術等 手術・処置等2なし 副傷病なし 23 23.00 11.75 0.00 83.26
010030xx01x00x 未破裂脳動脈瘤 脳動脈瘤頸部クリッピング等 手術・処置等2なし 副傷病なし 12 36.83 15.61 0.00 73.75
010040x099x00x 非外傷性頭蓋内血腫(非外傷性硬膜下血腫以外)(JCS10未満) 手術なし 手術・処置等2なし 副傷病なし 11 37.18 19.10 0.00 76.91
脳神経外科で最も多い症例は、慢性硬膜下血腫です。慢性硬膜下血腫は、頭部外傷を負って1~2か月後に歩行障害や認知症棟の症状が起こる病気です。脳の萎縮がみられる高齢者に多く、平均年齢は83歳となっています。
当科における平均在院日数が全国平均値よりも高い水準にあるのは、術後や慢性期のリハビリテーションも転院することなく引き続き当院で行っているためです。回復期リハビリテーション病棟でADLが回復するまで十分治療を継続することが出来ます。
心臓血管外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
050050xx0101xx 狭心症、慢性虚血性心疾患 心室瘤切除術(梗塞切除を含む。) 単独のもの等 手術・処置等1なし 手術・処置等21あり 9 22.11 23.29 0.00 71.33
050080xx01010x 弁膜症(連合弁膜症を含む。) ロス手術(自己肺動脈弁組織による大動脈基部置換術)等 手術・処置等1なし 手術・処置等21あり 副傷病なし 6 25.67 23.93 0.00 70.83
050163xx03x0xx 非破裂性大動脈瘤、腸骨動脈瘤 ステントグラフト内挿術 手術・処置等2なし 5 15.00 12.51 0.00 86.00
28年度のデータでは下肢静脈瘤に対する手術症例が最も多くありましたが、最近では外来での日帰り手術が原則化されたため入院での治療はほとんどなくなりました。今回1番目に多いのが虚血性心疾患の患者様に対して、冠動脈バイパス術を施行する症例です。当院ではほとんどの症例で心臓を動かしたまま行う「オフポンプ」による手術を施行しています。これにより心臓にかかる負担を少なくし、全身状態の回復を早めることが出来ます。2番目に多いのが弁膜症です。人工弁や機械弁に取り換える弁置換術や、自己弁を温存し弁の周囲を整える弁形成術などを行います。また腹腔内の大動脈瘤に対するステントグラフトによる治療も増えてきました。
放射線科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
070040xx99x2xx 骨の悪性腫瘍(脊椎を除く。) 手術なし 手術・処置等22あり 17 17.35 23.73 70.59 71.29
040040xx9902xx 肺の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等22あり 8 32.38 23.68 0.00 75.88
010010xx99030x 脳腫瘍 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等23あり 副傷病なし 7 10.43 9.59 28.57 59.86
当院では平成19年よりトモセラピー(IMRT)を導入し、現在では3号機まで稼働しております。現状、あらゆる部位の照射が可能ですが、入院症例となるのは照射を導入する患者や化学療法と併用して照射を行う患者が中心であり、原則的には外来に通院しながらの治療となります。
前立腺癌や乳癌の骨転移に対するものが最も多く、次いで肺転移や脳転移の対する照射症例が多くなっています。
泌尿器科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
110070xx0200xx 膀胱腫瘍 膀胱悪性腫瘍手術 経尿道的手術 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし 119 5.58 7.31 0.00 74.40
11012xxx020x0x 上部尿路疾患 経尿道的尿路結石除去術等 手術・処置等1なし 副傷病なし 71 3.32 5.75 0.00 57.11
110080xx01x0xx 前立腺の悪性腫瘍 前立腺悪性腫瘍手術等 手術・処置等2なし 63 11.44 12.92 0.00 67.56
入院の症例数として最も多いのは前立腺癌疑いに対する検査入院ですが、前立腺生検目的での入院はDPC対象外になりますので今回の集計には反映されておりません。
DPC患者で最も多いのは、膀胱癌に対して手術目的に入院される患者様です。膀胱癌は再発率が高く、男性の癌による死亡原因としてその増加が注目されています。
次いで多いのが尿管結石で28年度に比べ症例数が若干ですが増加しました。
3番目に多いのが前立腺癌ですが、当院では手術支援ロボット(ダヴィンチシステム)を導入しており、これにより低侵襲かつ術後合併症の発生率が低いため、全国の平均在院日数よりも短い傾向にあります。
血管外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
050170xx02010x 閉塞性動脈疾患 動脈形成術、吻合術 指(手、足)の動脈等 手術・処置等1なし、1あり 手術・処置等2あり 副傷病なし 53 13.55 22.44 1.89 69.62
050170xx0221xx 閉塞性動脈疾患 動脈形成術、吻合術 指(手、足)の動脈等 手術・処置等12あり 手術・処置等2あり 26 75.73 72.84 15.38 68.27
050170xx02011x 閉塞性動脈疾患 動脈形成術、吻合術 指(手、足)の動脈等 手術・処置等1なし、1あり 手術・処置等2あり 副傷病あり 19 32.26 38.84 5.26 71.05
糖尿病足病変や下肢動脈硬化症の患者様に対する手術症例が多いのが特徴です。血管移植・バイパス術の症例数が突出していますが、その適応のない患者に対してはできる限り切断せず患肢の救済を目的に診療を行っています。
糖尿病内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
110310xx99xx0x 腎臓または尿路の感染症 手術なし 副傷病なし 43 20.21 12.34 9.30 79.60
100070xx99x100 2型糖尿病(糖尿病性ケトアシドーシスを除く。)(末梢循環不全なし。) 手術なし 手術・処置等21あり 副傷病なし85歳未満 42 14.21 14.27 0.00 60.52
110280xx99000x 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全 手術なし 手術・処置等1なし 手術・処置等2なし 副傷病なし 41 12.07 12.23 4.88 71.17
28年度に比べ腎臓疾患が増加し、肺炎が減少しました。その中でも糖尿病の教育入院はやはり患者数の多い症例です。糖尿病は生活習慣病であり、覚えなければいけないこと(病気自体のこと、食事のことなど)が多くあります。教育入院を通じて医師、栄養士、看護師、薬剤師が協同して指導にあたります。また、外来通院を行っていても血糖コントロールが不十分だったり、糖尿病の合併症が悪化したりするときには治療のために入院が必要になります。
腫瘍血液内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
130010xx97x2xx 急性白血病 手術あり 手術・処置等22あり 58 33.45 40.97 0.00 62.66
040040xx9910xx 肺の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等1あり 手術・処置等2なし 53 5.45 3.59 3.77 73.55
040081xx99x00x 誤嚥性肺炎 手術なし 手術・処置等2なし 副傷病なし 32 22.84 20.83 12.50 86.03
"一番多いのが急性白血病に対して化学療法を行う症例です。急性白血病は速やかな入院管理と診断・加療が要求される疾患であり、当科では突然入院となった患者様やご家族にも安心して治療に専念していただけるよう十分なご説明を行い、ご理解をいただきながら最善の治療を進めるよう心がけています。呼吸器内科としても治療を行う医師がいるため、28年度に引き続き肺がんや肺炎の症例数がランクインしましたが、それ以外にも間質性肺疾患や慢性閉塞性肺疾患、気胸および胸膜疾患等にも対応しております。
"
乳腺外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
090010xx03x0xx 乳房の悪性腫瘍 乳腺悪性腫瘍手術 乳房部分切除術(腋窩部郭清を伴わないもの) 手術・処置等2なし 136 3.01 6.37 0.00 52.66
090010xx01x0xx 乳房の悪性腫瘍 乳腺悪性腫瘍手術 乳房部分切除術(腋窩部郭清を伴うもの(内視鏡下によるものを含む。))等 手術・処置等2なし 91 3.71 11.45 0.00 49.34
090010xx02x0xx 乳房の悪性腫瘍 乳腺悪性腫瘍手術 単純乳房切除術(乳腺全摘術)等 手術・処置等2なし 87 4.20 10.15 0.00 53.45
乳がんは切除する範囲の大きさやリンパ節治療をどこまで行うかでDPCがそれぞれ異なりますので、トップ3とも乳がんの手術症例がランクインしています。いずれも全国平均よりも早い退院になっているのが特徴です。最近では芸能人の罹患により病識が若い世代にまで浸透しつつあり、当科領域の症例数が大幅に増加しています。当院では乳がんの治療はホルモン療法や抗癌剤治療、分子標的薬による治療等さまざまな手法を用いることができるため、治療効果の最大化とQOLへの配慮を考えながら診療を行っています。
初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数ファイルをダウンロード
初発 再発 病期分類
基準(※)
版数
Stage I Stage II Stage III Stage IV 不明
胃癌 10 5 7 12 36 25 1 7
大腸癌 10 10 30 20 77 60 1 7
乳癌 112 75 29 5 9 73 1 7
肺癌 3 2 5 39 33 28 1 7
肝癌 1 2 0 3 9 27 1 7
※ 1:UICC TNM分類,2:癌取扱い規約
※5大がんと呼ばれる胃がん、大腸がん、乳がん、肺がん、肝がんの患者様の数を、初発のUICC病期分類別、および再発に分けて集計しています。
 UICC病期分類とは、「UICC病期分類対がん連合」によって定められた、①原発巣の進展度、②所属リンパ節への転移状況、③遠隔転移の有無、の3つのカテゴリーによって各がんをⅠ期(早期)からⅣ期(末期)の4病期(ステージ)に分類するものです。
※「初発」とは、当院において当該腫瘍の診断、あるいは初回治療を実施した場合を指し、「再発」とは、当院・他施設を問わずに初回治療が完了した後、当院に  て継続的な治療をした場合や、寛解後の局所再発または新たな遠隔転移をきたした場合を指します。

当院で著しく件数が伸びているのが乳癌の治療です。昨今、芸能人の罹患によって若い方にもその病識が啓蒙されたのが原因かもしれませんが、とくに早期での治療が多くなっています。都外から手術を希望される方も増えており、単に社会的ニーズの高まりだけではなく、術後の放射線治療までも最新設備でカバーできる当院の治療体制が幅広く認知され始めてきたのも要因の一つと思われます。また、初発の患者数だけでなく、再発の患者数もそれなりに多い理由としては、当院が初回診断・治療を終えられた患者様の、継続加療の受け皿になっていることを示しています。外科的手術や化学療法はもちろんのこと、仕事帰りの夜間帯でも最先端の放射線治療が受けられる体制など、あらゆる患者様のニーズにお応えしてきた結果だと思われます。
成人市中肺炎の重症度別患者数等ファイルをダウンロード
患者数 平均
在院日数
平均年齢
軽症 12 12.83 57.75
中等症 97 15.05 79.00
重症 43 19.72 84.09
超重症 12 24.17 84.75
不明 0 0.00 0.00
 市中肺炎は軽症の場合ほとんどが基本的に外来診療となりますが、患者様の状態によって重症化が懸念される場合は入院加療となります。
当院では中等症から重症の患者様が市中肺炎入院の大半を占めています。この割合は昨年と大きく変動しておりません。高齢化に伴い中等症以上の患者様が増加する傾向がありますが、当院の結果からも平均年齢が上がるほど重症化していることがわかります。また、高齢者になると複数の基礎疾患を持つ患者様が多く、そのため肺炎そのものは軽症であっても治療への反応が不良で、入院期間が長くなることがしばしばみられます。そのため、ガイドラインに基づいた適切な抗菌薬の選択、輸液や栄養管理、臥床に伴う廃用防止のためのリハビリテーション等、幅広い治療に取り組んでいます。
脳梗塞の患者数等ファイルをダウンロード
発症日から 患者数 平均在院日数 平均年齢 転院率
3日以内 140 44.21 75.31 5.73
その他 17 34.18 74.76 1.27
脳梗塞の患者様についてICD10コード別の患者数、平均在院日数、平均年齢、転院率を集計したものです。
 ⇒ICD10コード……国際的な統計基準として世界保健機関(WHO)によって公表された傷病に関する分類です。

当院では脳卒中の診療において、超急性期から慢性期に至るまであらゆる患者様に対応できる診療体制が整っています。発症後3時間程度の超急性期脳梗塞には、t-PA静注療法という血栓を強力に溶かす治療を優先して行い、早期からのリハビリテーションも可能です。また、当院のみで治療が完結できるよう、回復期リハビリテーション病棟を有しており、病期と病状に応じたシームレスな診療が提供できます。そのため、リハビリを継続するのに転院する必要がなく、集計結果から見てもわかるように転院率が極端に少なくなっているのが特徴です。
診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)ファイルをダウンロード
消化器内科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K7211 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術(長径2cm未満) 137 0.31 1.07 0.00 65.09
K7212 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術(長径2cm以上) 22 0.36 1.41 0.00 66.73
K688 内視鏡的胆道ステント留置術 13 7.08 12.85 7.69 77.62
消化器内科で最も件数の多い手術は内視鏡的結腸ポリープ・粘膜切除術です。これは内視鏡を用いて腸にあるポリープを切除する治療です。健康診断結果や近隣の開業医の先生からの紹介も多く、他の手術に比べて圧倒的に多い症例数になっているのが特徴です。
次いで多い手術は、総胆管結石や胆道疾患に対する内視鏡的逆行性胆管膵管造影法(ERCP)による手術です。胆汁の流れを良くするために、内視鏡を用いて胆道にチューブを留置したり、胆道を拡張し結石を除去する治療も行います。
循環器内科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K5493 経皮的冠動脈ステント留置術(その他) 310 0.85 1.53 0.32 68.93
K5951 経皮的カテーテル心筋焼灼術(心房中隔穿刺、心外膜アプローチ) 121 1.22 2.93 0.00 64.98
K5491 経皮的冠動脈ステント留置術(急性心筋梗塞) 65 0.02 9.00 1.54 64.95
心臓病は先進国の多くで死因のトップとなっており、日本でも死因の2位となっています。その中でも最近増加傾向にあるのが狭心症や心筋梗塞で、あわせて虚血性心疾患と呼ばれます。
当科ではこの虚血性心疾患に対する冠動脈カテーテル治療(ステント留置術、バルーン拡張術等)を最も多く施行しており、予定入院であれば1泊2日で退院することも可能です。
また近年では不整脈治療にも力を入れており、特に心房細動に対するカテーテルアブレーション(経カテーテル心筋焼灼術)の件数が増えてきました。アブレーション手術とは過剰な伝導路(心筋を動かす電気の通り道)や不整脈の焦点を焼いてしまう治療のことです。さらに2015年度からは、約マイナス60度まで温度が下がるバルーンカテーテルによる冷凍焼灼術という新しい治療も開始しました。これは従来のアブレーションよりも治療時間が短縮でき、術中の痛みが少ないなどのメリットがあります。
外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K7211 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術(長径2cm未満) 211 0.28 1.22 0.00 66.19
K672-2 腹腔鏡下胆嚢摘出術 118 6.43 5.58 0.00 65.81
K6335 鼠径ヘルニア手術 95 1.66 3.33 0.00 74.39
28年度のランキングと同様の結果になりました。外科で最も件数の多い手術は消化器内科同様、大腸ポリープの切除術になりました。当院では外科と消化器内科の混合病棟があり、合同でのカンファレンスだけに留まらず常日頃から連携ができる環境にあるため、消化器疾患全般のシームレスな対応が可能です。
次いで多いのが腹腔鏡下で行う胆嚢摘出術です。胆嚢炎や胆嚢結石症に対して行う手術で、腹腔鏡により腹腔内を観察しながら、腹壁から腹腔内に挿入した鉗子類を用いて胆嚢を摘出します。腹壁の破壊が少ないため術後の疼痛が少なく、入院期間が短いのが特徴です。
3番目に多いのはヘルニアに対する手術です。高齢化に伴い鼠径ヘルニアの件数は増えており、DPC対象以外の手技も含めると当院では年間200例近く手術を行っています。
整形外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K0821 人工関節置換術(肩,股,膝) 303 1.28 16.71 0.99 72.14
K0461 骨折観血的手術(肩甲骨,上腕,大腿) 106 3.26 26.20 16.04 74.98
K0462 骨折観血的手術(前腕,下腿,手舟状骨) 91 1.40 2.81 1.10 56.37
高齢化に伴う変形性関節症(股関節、膝関節)の手術が多いことが特徴です。28年度と比較しても30件ほど増加しました。原則、外来通院中に手術のための術前検査(血液検査、心電図、レントゲンなど)を済ませますので、入院は手術前日になります。
また長期リハビリが必要な場合も、回復期リハビリテーション病棟を有しているため、当院で治療を完結させることが可能です。そのため他の急性期病院にありがちなリハビリ目的の転院がほとんどありません。
脳神経外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K164-2 慢性硬膜下血腫穿孔洗浄術 27 1.56 22.26 0.00 82.78
K1771 脳動脈瘤頸部クリッピング(1箇所) 13 2.15 51.54 0.00 73.69
K1742 水頭症手術(シャント手術) 12 8.75 52.67 0.00 79.92
脳神経外科で最も多い手術は、慢性硬膜下血腫穿孔洗浄術です。慢性硬膜下血腫は、頭部外傷を負って1~2か月後に歩行障害や認知症等の症状が起こる病気で、多くが緊急での手術を必要とすることから、平均術前日数が1日程度となっています。また、脳の萎縮がみられる高齢者に多く、平均年齢は82.8歳となっています。
次いで多いのが脳動脈瘤をこれ以上大きくしないようクリップで留めてしまう手術です。3番目に多いのが水頭症に対する手術で、脳の中にたまった脳脊髄液を体内の他の場所に流します。これにより障害されていた脳の機能を取り戻すことが出来ます。
心臓血管外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K552-22 冠動脈、大動脈バイパス移植術(人工心肺不使用)(2吻合以上) 15 9.67 18.13 0.00 70.13
K5551 弁置換術(1弁) 8 15.25 22.25 0.00 77.00
K5607 大動脈瘤切除術(腹部大動脈(その他のもの)) 4 9.25 12.75 0.00 74.25
1番目に多いのが虚血性心疾患の患者様に対して行う、冠動脈バイパス術です。冠動脈の病変部分を直接治療するのではなく、患者様自身の腕や足などの健康な血管を冠動脈につなぎ、血液を末端まで送る血管の迂回路を作成する手術です。人工心肺を使用して行う場合もありますが、当院ではほとんどの症例で、心臓を動かしたまま行う「オフポンプ」による手術を施行しています。これにより心臓にかかる負担を少なくし、全身状態の回復を早めることが出来ます。
2番目に多いのが心臓にある弁を人工弁や機械弁に取り換える弁置換術です。3番目に多いのが大動脈瘤の切除術です。瘤ができる場所によって手技が変わりますが、当院で多いのは腹部大動脈瘤に対するY-graft置換術になります。術後は早ければ術翌日から心臓リハビリテーションを施行し、ADLの早期回復に努めています。
28年度までは症例数の多かった下肢静脈瘤に対する手術ですが、最近では外来や関連クリニックでの日帰り手術に重点をおいており、年々入院での治療件数が減っています。
泌尿器科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K8036イ 膀胱悪性腫瘍手術(経尿道的手術)(電解質溶液利用のもの) 120 1.40 3.31 0.00 74.43
K7811 経尿道的尿路結石除去術(レーザー) 68 0.88 2.24 0.00 57.29
K843-4 腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術(内視鏡手術用支援機器を用いる) 63 2.00 8.44 0.00 67.56
28年度と同様のランキングになりました。
泌尿器科で最も多いのは膀胱癌の経尿道的手術です。これは尿道から膀胱に内視鏡を挿入し、先端の電気メスで腫瘍を切除する手術です。手術中膀胱内に洗浄液を注入しますが、電解質溶液(生理食塩水)を用いるため、感染などの合併症が少なくなります。
2番目に多い手術は、経尿道的尿路結石除去術(レーザーによるもの)です。腎結石症や尿管結石症の患者様に対して行う手術です。経尿道的に内視鏡を挿入し、超音波やレーザーなどで結石を破砕し、バスケットワイヤーカテーテル等を用いて摘出します。原則的に2泊3日での退院が可能です。
これに次ぐのが前立腺癌に対する腹腔鏡手術で、当院では平成27年4月よりロボット支援鏡視下手術(ダヴィンチシステム)を導入しています。これにより低侵襲で、術後尿失禁等の合併症を低く抑えることができ優良な成績を得ています。
血管外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K6145 血管移植術、バイパス移植術(下腿、足部動脈) 66 3.39 59.79 10.61 67.94
K6146 血管移植術、バイパス移植術(膝窩動脈) 25 2.52 14.24 0.00 69.40
K0843 四肢切断術(指) 18 3.67 39.56 5.56 70.06
糖尿病足病変や下肢動脈硬化症の患者様に対する手術症例が多いのが特徴です。血管移植・バイパス術の症例数が突出していますが、その適応のない患者に対してはできる限り切断せず患肢の救済を目的に診療を行っています。
乳腺外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K4762 乳腺悪性腫瘍手術(乳房部分切除術(腋窩部郭清を伴わない)) 137 1.00 1.01 0.00 52.61
K4763 乳腺悪性腫瘍手術(乳房切除術(腋窩部郭清を伴わない)) 84 1.00 2.24 0.00 53.00
K474-2 乳管腺葉区域切除術 57 1.00 1.00 0.00 46.56
乳がんは切除する範囲の大きさやリンパ節治療をどこまで行うかで手術名称が異なります。最近では芸能人の罹患により病識が若い世代にまで浸透しつつあり、リンパ節への転移がない乳がん初期早期での手術症例数が大幅に増加しています。また、乳がんとまではいかない良性所見に対する手術症例も増加しており、年を追うごとに当科領域の手術件数は増えていく一方です。
その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)ファイルをダウンロード
DPC 傷病名 入院契機 症例数 発生率
130100 播種性血管内凝固症候群 同一 2 0.02
異なる 23 0.28
180010 敗血症 同一 7 0.09
異なる 21 0.26
180035 その他の真菌感染症 同一 0 0.00
異なる 0 0.00
180040 手術・処置等の合併症 同一 84 1.02
異なる 7 0.09
 播種性血管内凝固症候群(DIC)、敗血症、真菌症、手術・処置後の合併症を罹患した患者様について、入院時にその状態にあったか、あるいは入院後にその状態になったのか、それぞれその症例数と発生率を集計したものです。この指標は、医療の質の改善に資する為、臨床上ゼロになりえないものの少しでも改善すべきもので、DPCデータの精度向上を図るために公表することとされている項目です。
DICとは、さまざまな重症基礎疾患を原因に発症し、原疾患の急激な悪化と出血傾向の増加をきたす病態です。また、重篤な外傷、外科疾患の大手術後やさまざまな感染症などから血液中に病原菌が入り敗血症になり、これが原因でDICが起こることもあります。
当院のDICと敗血症の発生状況をみてみると、入院後にその状態になった件数がそれぞれ23件(0.28%)と21件(0.26%)になっており、そのほとんどが高齢者や大手術後の患者様でした。前年度はそれぞれ14件(0.2%)、29件(0.3%)でしたのであまり発生率に変化はないようです。
その他の真菌感染症の発生状況は、入院時点・入院後もともに0件でした。
手術・処置等の合併症で多いのは、腎不全の患者様の人工透析や腹膜潅流を行うために必要なシャントやカテーテル等の狭窄・閉塞あるいは感染に対するものです。次いで多いのは人工関節のゆるみや脱臼のための再置換手術目的や、また手術後の創部感染治療目的の患者様も見受けられます。
もちろん外科的大手術や人工物を入れる手術・処置は感染の危険が多く存在します。術中は細心の注意を払っていますがゼロにはなりえません。そのため当院では、各診療科はもちろんのことですが、他職種で形成した感染対策チームを中心に、感染予防対策の院内周知と、万が一感染した場合の迅速な対応に日々取り組んでいます。
更新履歴
平成30年9月29日
平成29年度病院指標データの公開開始。